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みなさんは「VR酔い」という言葉をご存知でしょうか?
VR(仮想現実)の体験中に気分が悪くなる人がいます。今回は、VR体験中に起こる症状「VR酔い」の原因とそのメカニズムについて、少し見てみましょう。
VR体験中に起こる「VR酔い」とは?
VR酔いとは、VR:バーチャルリアリティ(仮想現実)体験によって気分が悪くなる症状のことをいいます。一般にVR酔いは、船酔い・車酔いなどの乗り物酔いなどと同様の動揺病と一種と考えられています。動揺病とは、視覚・前庭・体制感覚などが関連する酔いのことで、車酔いなどのほかに、宇宙酔い、映画酔い、シミュレータ訓練による酔いなどがあります。
VRデバイスが広く普及したことで、VRで酔ってしまうという症状が出るユーザーが増えています。
VR酔いの一般的症状は、不快感、頭痛、胃部の違和感、吐き気、嘔吐、顔面蒼白、発汗、倦怠感、眠気、方向感覚障害、無気力無関心があるとされていますが、症状の種類や程度には個人差があります。
車酔いや船酔いは三半規管の混乱で起こります。VR酔いは視覚と脳の感覚のズレから起こります。原因は違いますが、原理は似たようなもので気持ちの悪さの種類はほぼ同じようなものです。
VR酔いは最近発見されたものではなく、英語ではvertual reality sicknessと呼ばれていて、2000年にはVR酔いに関する論文も発表されています。
VR酔いの原因は何?
VR酔いの原因は現在も研究者が原因や対策を調べている段階で、病理そのものは解明されていません。VR酔いを含む動揺病が起こる原因にも諸説あります。
現在VR酔いの原因とされているのは、視覚情報と体の揺れや傾きを感じる平衡感覚の不一致によるものです。
一般的な例として車酔いを取り上げて見てみましょう。
車の振動や加速、体の傾斜などの刺激は三半規管でとらえられます。この情報は脳から眼球に伝えられ、眼球も頭の位置と協調して動くように指示されます。しかし、ここで予想外の情報が入ってしまうと、頭の位置と目で見た情報にズレが生じ、脳が混乱して乗り物酔いが起こります。
車で遠くの景色を見ていると酔いにくいというのは、この情報のズレが少ないためによるものです。
情報のズレは脳に伝えられ、その情報が心地よいものか、不快なものかの判断されます。情報のズレは脳にとって不快と判断され、不快なストレスに対抗するために、ストレスホルモンが分泌されます。
その結果、自律神経が興奮、血圧の変化、胃の不規則な動きなど様々な症状が現れます。これが乗り物酔いです。つまり、視覚情報と平衡感覚の不一致が酔いを引き起こします。
VR酔いも車酔いと同様と考えられ、仮想現実と自分の体が覚えている現実世界の感覚の不一致が、バランス感覚のズレを起こしてVR酔いが発生すると考えられています。ヘッド・マウント・ディスプレイ越しの視覚情報では「動いている」と感じるのに対し、平衡感覚は「動いていない」と感じる不一致がVR酔いを起こすのではないかということです。
車酔いなどでは、遠くの景色を見ることで視覚情報と平衡感覚の不一致をある程度埋めることができ、自分自身で酔いを軽減することが可能ですが、VR酔いは外の世界をシャットアウトしている状況で起こりますのでユーザー自身でコントロールすることが難しく、酔い対策をコンテンツの開発者が担うことになります。
また、一般的「酔い」のメカニズムも完全に解明されているわけではありません。
VR酔いは危険なのか?
VR酔いはかなり不快な感覚ですが、実際に嘔吐したという例は少ないようで、嘔吐ではなく嘔気にとどまります。
しかし、長時間VR酔いを体験すると翌日になっても症状を引きずる場合もあり、「VR二日酔い」になる危険もあります。
また、VR酔いを回避するために乗り物酔いを防ぐ薬を常用するのは体にも負担がかかり良くありません。酔い止めは脳内の分泌物質をコントロールして自律神経を鈍らせる薬です。常用すると脳内の分泌物質のバランスを崩し、精神の不安定を引き起こしたり鬱病になる可能性もあるといわれています。
VR酔いを無理に止めて、バーチャルリアリティを体験し続けることでの危険性はありそうです。
VR酔いに関するまとめ
VRゲームやアクションの多いVRコンテンツでは、かなりの没入感を得ることができます。しかし、視界と感覚の間にずれが生じやすいコンテンツでは、VR酔いになってしまう場合があります。プレイの続行が不可能なほどの酔いや吐き気、不快感を感じるユーザーも出てきてしまいます。
また、VR酔いは個人差が大きく、同じVRゲームによっても酔いに対する感覚は人それぞれです。
現在VR酔いに関して多くの研究がされていますが、まだ明確な原因や対策は見つかっていません。
次回は、VR酔いを軽減する方法や対策について調べてみようと思います。
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